こんにちは。
福岡市南区西長住、マルキョウ桧原店前にある
「西長住まつなが歯科」院長の松永紘明です。
歯科医院で、
「歯ぐきが少し腫れていますね」
「出血がありますね」
と言われたことはありませんか?
患者さんから、
「歯周病って何を基準に判断しているんですか?」
「先生によって診断が違うような気がするんですが…」
というご質問をいただくことがあります。
歯周病の診査では、歯周ポケットの深さだけでなく、歯ぐきにどの程度炎症があるのか、歯の周囲にどの程度プラークが付着しているのかを評価することも大切です。
こうした状態を数値化するため、歯周病学ではこれまでさまざまな評価方法が考案されてきました。
その代表的なものが、
GI(Gingival Index:歯肉炎指数)
PI(Plaque Index:プラーク指数)
です。
今回は、1967年に発表されたLöeの古典的な論文をもとに、GI・PIとはどのような評価方法なのか、そして現在の歯科臨床ではどのように考えられているのかをご紹介します。
GI(歯肉炎指数)とは?
GI(Gingival Index)は、
歯ぐきの炎症の程度を0~3の4段階で評価する方法です。
1963年にLöeとSilnessによって考案され、その後1967年の論文で詳しくまとめられました。
現在でも歯周病研究では非常によく使われています。
GIの評価基準
GIでは、歯ぐきの状態を次のように評価します。
| GI | 状態 |
|---|---|
| 0 | 健康な歯ぐき |
| 1 | 軽度の炎症(少し赤い・少し腫れている・出血なし) |
| 2 | 中等度の炎症(赤みや腫れがあり、プロービングで出血する) |
| 3 | 重度の炎症(強い腫れ・潰瘍・自然出血しやすい) |
この評価は歯ぐきの色・腫れ・出血を総合的に判断します。

出血はとても大切なサインです
この論文で特に重要視されているのが、
「出血するかどうか」
です。
GI1では歯ぐきに軽い炎症がありますが、プローブで軽く触れても出血しません。
一方GI2では、
プロービングによって出血が起こります。
GI3になると自然に出血することもあります。
つまり、
歯ぐきから出血するということは、炎症が進んでいるサインなのです。
現在の日常臨床でGIそのものをスコア化することは一般的ではありませんが、プロービング時の出血(BOP:Bleeding on Probing)については現在でも重要な歯周組織の評価項目です。
つまり、GIという指数をそのまま使用しなくても、
「歯ぐきから出血するかどうかを見る」
という考え方は現在の歯周病診療にもつながっています。
PI(プラーク指数)とは?
歯周病の原因は細菌のかたまりであるプラーク(歯垢)です。
PI(Plaque Index)は、
そのプラークがどれくらい付着しているかを評価する方法です。
評価は0~3で行います。
| PI | 状態 |
|---|---|
| 0 | プラークなし |
| 1 | 肉眼では見えないが探針で確認できる |
| 2 | 肉眼でも確認できる |
| 3 | 大量に付着している |
興味深いのは、
PI1では目で見えなくてもプラークが存在する
ということです。
つまり、
「歯が白く見える=きれい」
とは限りません。
見た目ではきれいに見える歯でも、歯と歯ぐきの境目には薄いプラークが形成されていることがあります。
そのため、歯周病予防では単純に「歯が白く見えるか」だけでなく、歯肉辺縁のプラークを適切に除去できているかが重要になります

GI・PIは現在の歯科医院でも使われている?
ここはGI・PIを理解するうえで大切なポイントです。
GIやPIは歯周病学の発展に大きく貢献した評価方法で、現在でも研究や疫学調査などで利用されることがあります。
一方で、一般的な歯科医院の日常臨床において、すべての患者さんのGI・PIを0~3でスコア化し、それを中心に歯周病を診断することは一般的ではありません。
現在の歯周病診療では、
- プロービングポケットデプス(PPD)
- プロービング時の出血(BOP)
- アタッチメントレベル(CAL)
- 歯の動揺
- プラークの付着状態
- レントゲンによる歯槽骨吸収
など、複数の情報を組み合わせて歯周組織の状態を評価します。
GI・PIは、現在の歯周病診断そのものというより、歯周病学の基礎を築いた重要な評価指標のひとつと考えると分かりやすいでしょう。
GI・PIには「評価する人によるばらつき」という弱点もある
GI・PIには非常に分かりやすいというメリットがある一方、注意すべき点もあります。
それが、
「評価する人の判断が入る」
ということです。
例えばGIでは、
「軽度の発赤なのか」
「中等度の発赤なのか」
といった判断が必要になります。
PIについても、
「薄いプラークなのか」
「肉眼で確認できる程度なのか」
「多量に付着しているのか」
を検査者が判断します。
そのため、同じ状態を評価しても、検査者によってスコアが異なる「検査者間誤差(inter-examiner variability)」が生じる可能性があります。
また、同じ検査者であっても、評価するタイミングによって判定に多少のばらつきが生じる可能性があります。
これはGI・PIのような視診や検査者の判断を含む半定量的な評価方法の限界のひとつです。

だからこそ歯周病は一つの数字だけで診断しません
歯周病の状態は非常に複雑です。
例えば、
歯ぐきに炎症があることと、
歯を支えている組織がどの程度失われているか
は同じ意味ではありません。
GIが評価しているのは主に現在の歯肉の炎症状態です。
一方、
歯周ポケットの深さ、アタッチメントロス、レントゲン上の骨吸収などは、歯周組織の破壊やその程度を評価するための別の情報です。
したがって、一つの指数だけを見るのではなく、複数の検査結果を組み合わせて判断する必要があります。
これは現在の歯周病診療でも非常に重要な考え方です。

当院ではどのように歯周病を評価しているの?
当院でもGIやPIを患者さんごとに0~3でスコア化して診断しているわけではありません。
実際の診療では、
歯周ポケットの深さ
プロービング時の出血
プラークの付着状態
歯の動揺
歯肉の状態
レントゲンで確認できる骨吸収
などを総合的に評価します。
そして、
「今、炎症があるのか」
だけでなく、
「これまでに歯を支える組織がどの程度失われているのか」
まで確認することで、現在の歯周病の状態を判断していきます。
まとめ
GI(Gingival Index)とPI(Plaque Index)は、歯ぐきの炎症やプラークの付着状態を数値化するために考案された、歯周病学の代表的な評価方法です。
現在でも研究や疫学調査などで利用されることがありますが、日常臨床ではGI・PIだけを使って歯周病を診断するわけではありません。
また、GI・PIには検査者の判断が入るため、検査者間で評価にばらつきが生じる可能性があるという限界もあります。
現在の歯周病診療では、BOP、歯周ポケット、アタッチメントレベル、プラーク、レントゲンによる骨吸収など、複数の情報を組み合わせて評価することが重要です。
半世紀以上前に考案されたGI・PIを知ると、
「歯ぐきの炎症」と「歯周組織の破壊」を分けて考える
という、現在にもつながる歯周病診断の基本的な考え方が見えてきます。
西長住まつなが歯科
福岡市南区西長住・長住・長丘・樋井川・桧原エリアで、歯周病治療・予防歯科に取り組んでいます。
「歯みがきすると歯ぐきから血が出る」
「歯周病が進んでいないか心配」
「しばらく歯周病検査を受けていない」
という方は、お気軽にご相談ください。
【参考文献】


