こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
西長住まつなが歯科院長の松永紘明です。
「歯ぐきが下がってきました。」
「歯が長く見えるようになりました。」
「歯ぐきの移植を勧められたけど、本当に意味があるのでしょうか?」
このようなご相談を受けることがあります。
歯ぐきが下がった部分を覆う「根面被覆術」は、見た目の改善や知覚過敏の軽減を目的として行われます。しかし近年では、歯ぐきを元の位置に戻すことだけでなく、『歯ぐきを厚くすること(歯周表現型の改善)』が長期的な安定性に重要であると考えられるようになっています。
今回は2023年に発表された最新の研究をご紹介します。
歯ぐきの厚みが重要な理由
歯ぐきには「厚いタイプ」と「薄いタイプ」があります。
薄い歯ぐきでは、
- 歯肉退縮が起こりやすい
- ブラッシングによるダメージを受けやすい
- 外科治療後に再び歯ぐきが下がるリスクが高い
ことが知られています。
そのため現在では、歯肉退縮の治療では歯ぐきを厚くすること自体が治療目標の一つになっています。

今回の研究
この研究では、
歯肉退縮(RT2)を有する14歯
に対して
- VISTA法(Vestibular Incision Subperiosteal Tunnel Access)
- 結合組織移植(Connective Tissue Graft:CTG)
を併用して治療しました。
さらに、通常の歯周プローブではなく、
3Dスキャナーで歯ぐきの厚みを立体的に解析
し、約5年半という長期間にわたり変化を追跡しています。

VISTA法とは?
VISTA法は、前歯部の歯ぐきの近くを切開するのではなく、
口の前庭部(唇側の少し離れた場所)に小さな切開を行い、骨膜下にトンネルを作って治療する方法です。
そのトンネル内に患者さん自身の結合組織を移植し、歯ぐきを歯冠側へ引き上げて固定します。
従来法と比べて、
- 歯ぐきへのダメージを抑えられる
- 血流を保ちやすい
- 審美性が高い
といった利点が期待されています。
結果① 歯ぐきは約1〜1.4mm厚くなった
治療から6か月後、
歯ぐきの厚みは
約1.0〜1.4mm増加
していました。
歯ぐきを「覆う」だけでなく、
しっかり厚みが増えていたことが確認されました。
結果② 5年以上経っても厚みはほぼ維持された
さらに注目すべき点は、
66か月(約5年半)経過しても歯ぐきの厚みはほとんど失われていなかった
ことです。
経時的な厚みの減少はごくわずかで、
著者らはVISTA法による歯周表現型の改善は非常に安定していると考察しています。

結果③ 根面被覆率も高かった
歯ぐきがどれだけ歯の根元を覆えたかを示す「根面被覆率」は、
- 6か月:約91.7%
- 66か月:約98.6%
という非常に良好な結果でした。
また、
歯ぐきが厚くなった症例ほど根面被覆率も高い
という相関も認められています。
つまり、
歯ぐきの厚みを増やすことが、長期的な治療成功につながる可能性が示されました。
この研究の限界
今回の研究は非常に興味深い内容ですが、
- 患者数は6名
- 対象歯は14歯
と比較的小規模な研究です。
また、後ろ向き研究であるため、
今後さらに大規模な研究で検証されることが期待されています。
当院の考え
歯ぐきが下がる原因は、
- 強いブラッシング
- 歯周病
- 噛み合わせ
- 歯ぐきの厚み(歯周表現型)
など、さまざまです。
そのため当院では、
単に歯ぐきを覆うだけでなく、
将来的にも安定しやすい歯ぐきを目指した治療計画を大切にしています。
歯ぐきの下がりや見た目、知覚過敏でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
今回の研究では、
✅ VISTA法と結合組織移植により歯ぐきは約1〜1.4mm厚くなった
✅ 増加した歯ぐきの厚みは約5年半維持された
✅ 歯ぐきが厚くなった症例ほど根面被覆率も高かった
✅ 「歯ぐきを厚くすること」が長期的な安定につながる可能性が示された
という結果でした。
歯肉退縮治療では、「歯ぐきを覆う」だけではなく、「歯ぐきを厚くする」という視点も非常に重要になっています。これは今後の歯周形成外科において、ますます重要な考え方になるでしょう。
【参考文献】


