こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
「西長住まつなが歯科」院長の松永紘明です。
歯ぐきが下がってきたと感じたとき、
「前歯が何本も長く見える…」
「冷たいものがしみる」
「1本ずつ手術しないといけないの?」
という疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。
実は歯肉退縮は1本だけ起こることよりも、隣り合う複数の歯に同時に起こることの方が多いとされています。
現在では、複数の歯肉退縮を1回の手術で自然に改善する術式が確立されています。
今回は、その治療法の基礎となった、Giovanni Zucchelli先生らが2000年に発表した名論文をご紹介します。
歯肉退縮は何本も同時に起こることが多い
歯肉退縮(歯ぐきが下がること)は、
- 強すぎる歯磨き
- 歯周病
- 歯並び
- 咬み合わせ
- 歯ぐきの薄さ
など様々な原因で起こります。
実際には、
「犬歯だけ」
よりも
前歯4~5本がまとめて下がる
というケースをよく経験します。
しかし2000年頃までは、歯肉退縮に対するCAF(歯肉弁歯冠側移動術)の報告の多くは1本の歯(単独歯)を対象としていました。
そのため、
「複数歯をどのように自然に治療するか」
という点が大きな課題でした。

Zucchelli先生が考案したModified CAFとは?
この論文で最も重要なのは、
複数の歯肉退縮を1回の手術で審美的に治療するための新しいCAFデザイン
を提案したことです。
従来法では、
- 歯ごとに処置が必要
- 縦切開が増える
- 傷跡が目立つ
- 血流が低下しやすい
という問題がありました。
そこで著者らは、
- Envelope flap
- Split-Full-Split flap
- 乳頭(Papilla)の新しいデザイン
を組み合わせたModified CAFを考案しました。
この術式は現在でも世界中で行われているZucchelliテクニックの原型となっています。

Modified CAFの特徴
この術式にはいくつもの工夫があります。
① 縦切開を行わない
縦切開を避けることで血流を保ちやすくなり、傷跡も目立ちにくくなります。
② Split-Full-Splitデザイン
歯ぐきの厚みを保ちながら十分な可動性を確保できます。
③ 乳頭(Papilla)の位置を計算して切開する
乳頭がずれないよう特殊な切開線を設計し、術後の見た目をより自然にしています。
④ 複数歯を一度に治療できる
患者さんの負担を減らしながら、高い審美性を目指せることが最大の特徴です。
この研究ではどんな患者さんを調べたの?
対象となったのは
- 22名
- 18〜34歳
- Miller Class I・II
- 合計73部位
です。
隣接する複数歯の歯肉退縮を1回の手術で治療し、1年間経過を観察しました。
治療成績はどうだった?
結果は非常に優秀でした。
平均すると
✅ 根面被覆率97%
✅ 完全根面被覆88%
✅ 患者さん全体の73%で全ての歯肉退縮が完全に改善
という高い成功率でした。
さらに興味深いのは、
治療した歯の本数が増えても治療成績は低下しなかった
という点です。
つまり、
「何本も同時に治療すると成功率が下がる」
ということは認められませんでした。

角化歯肉が少なくても治療できる?
当時は
「角化歯肉が少ないとCAFは難しい」
という考えが一般的でした。
しかし、この研究では、
角化歯肉が少ない症例ほど術後に角化歯肉が増加する傾向
が認められました。
もちろん現在では、
- 歯ぐきの厚み
- 骨の状態
- 歯の位置
- 歯肉退縮のタイプ
などを総合的に診断し、
CAF単独が良いのか、
結合組織移植(CTG)を併用するべきかを判断します。
現在でも世界中で使われている理由
この論文は25年以上前に発表されましたが、
現在でもModified CAFは歯周形成外科の代表的な術式の一つです。
その理由は、
- 自然な見た目
- 高い成功率
- 複数歯を同時に治療できる
- 血流を保ちやすい設計
など、多くのメリットがあるためです。
その後の研究では、結合組織移植(CTG)を組み合わせることで、さらに長期的な安定性が向上することも報告されており、現在の歯肉退縮治療の基礎となっています。
当院での歯肉退縮治療
当院では、
- 歯肉退縮の原因
- 歯ぐきの厚み
- 歯槽骨の状態
- 歯ブラシの当て方
- 咬み合わせ
まで総合的に診査し、
CAFや結合組織移植など、患者さんに適した歯周形成外科をご提案しています。
「歯ぐきが何本も下がってきた」
「見た目を自然に改善したい」
「知覚過敏も気になる」
という方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
Zucchelliらが2000年に発表したこの論文は、複数歯の歯肉退縮を1回の手術で審美的に治療するModified CAFを確立した歴史的な研究です。
この研究では、
- 隣接する複数歯を同時に治療
- 平均97%という高い根面被覆率
- 完全根面被覆88%
- 治療本数が増えても成績は低下しない
という優れた結果が報告されました。
現在の歯周形成外科の発展に大きく貢献した、今なお多くの歯科医師に引用され続けている重要な論文の一つです。
【参考文献】


