こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
西長住まつなが歯科院長の松永紘明です。
患者さんから
「歯ぐきが下がって歯が長く見えるようになった」
「歯の根元がえぐれたように削れている」
「冷たいものがしみる」
というご相談を受けることがあります。
実はこの3つは別々の問題ではなく、
歯肉退縮(歯ぐきが下がること)と、くさび状欠損(Non-Carious Cervical Lesion:NCCL)が同時に起こっている
ケースが少なくありません。
今回は2025年に発表された論文をもとに、
レジン修復と歯周形成外科を組み合わせた最新の治療法
について解説します。
歯肉退縮とは?
歯肉退縮とは、
歯ぐきが下がり、
歯の根元(歯根)が露出してしまう状態です。
症状としては
- 歯が長く見える
- 知覚過敏
- 見た目が気になる
- 根元がむし歯になりやすい
などがあります。

くさび状欠損(NCCL)とは?
歯の根元が
V字型やくさび状に削れてしまう状態を
くさび状欠損(NCCL)
と呼びます。
原因として
- 強いブラッシング
- 酸による影響
などが考えられています。
論文では、
歯肉退縮の約50%はNCCLを伴う
と紹介されています。

歯ぐきだけ治せばいいわけではありません
歯ぐきが下がっているだけなら、
歯周形成外科だけで改善できる場合があります。
しかし、
根元が削れている場合は、
まず失われた歯の形を回復する必要があります。
そのため、
近年では
レジン修復と歯周形成外科を組み合わせる方法
が注目されています。
この研究ではどんな治療を行ったの?
この研究では、
まず、
削れた根元を
コンポジットレジン
で部分的に修復しました。
その1週間後に、
歯冠側移動術(CAF)
を行い、
さらに
VCMX(Volume-Stable Collagen Matrix)
というコラーゲンマトリックスを歯ぐきの下に入れて、
歯ぐきの厚みを増やす治療を行いました。
VCMXは、
患者さん自身の口蓋から歯ぐきを採取する代わりとして開発された材料です。

治療結果は?
6か月後には、
平均で
✅ 歯肉退縮は 2.1mm改善
✅ 推定根面被覆率 約69%
✅ 歯ぐきの厚み 0.42mm増加
✅ 見た目の満足度は大きく改善
という結果でした。
一方で、
歯ぐきの幅(角化歯肉幅)は有意な増加は認められませんでした。

歯ぐきを採取しない治療は将来有望?
現在、
歯肉退縮治療のゴールドスタンダードは
結合組織移植術(CTG)
です。
ただし、
CTGには
- 口蓋から歯ぐきを採取する必要がある
- 術後の痛み
- 採取できる量に限界がある
というデメリットがあります。
VCMXは、
そうした負担を軽減するために開発された材料ですが、
現時点ではCTGを完全に置き換えるほどのエビデンスはまだありません。
この研究の限界
この研究は
- 症例数10例
- ケースシリーズ
- 観察期間6か月
- 比較群なし
という限界があります。
著者らも、
今後はランダム化比較試験による検証が必要
と述べています。
歯科医師としての考察
歯肉退縮とくさび状欠損は、
別々ではなく同時に起こることが多い疾患です。
そのため、
歯ぐきだけを治療しても、
削れた歯の形態を適切に回復しなければ、
十分な審美性や機能が得られない場合があります。
今回の研究では、
レジン修復と歯周形成外科を組み合わせることで、
歯ぐきの位置だけでなく、
歯の形態や見た目も改善できる可能性が示されました。
一方で、
現在でも最も予知性が高い方法は結合組織移植術(CTG)であり、
VCMXは患者さんの負担を軽減できる可能性を持つ新しい選択肢として、今後さらに研究が進むことが期待されます。
参考文献


