こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
西長住まつなが歯科院長の松永紘明です。
お子さまの歯並びについて調べていると、
- 「プレオルソ」
- 「マルチファミリー」
- 「MFT(口腔筋機能療法)」
- 「口呼吸」
- 「舌の位置」
といった言葉を目にすることがあるのではないでしょうか。
これらの筋機能矯正装置では、単に歯を動かすことだけを目的としているわけではありません。
舌・頬・唇の筋肉のバランスを整え、お口の機能を改善することで、成長期のお子さまの健全な歯列や顎の発育をサポートすることを目的としています。
その考え方の基礎となるのが、
「ニュートラルゾーン(Neutral Zone)」
という概念です。
歯列は、
- 外側からの力(頬・唇の筋肉)
- 内側からの力(舌の筋肉)
この2つの力がつり合う位置(ニュートラルゾーン)に最も安定すると考えられています。
では、本当に頬の筋肉は歯並びに影響しているのでしょうか。
今回は、頬の筋肉である**頬筋(Buccinator)**の働きを詳しく調べた論文をご紹介しながら、プレオルソやマルチファミリーなどの筋機能矯正がどのような考え方に基づいているのかを、歯科医師の視点から分かりやすく解説します。
頬筋(Buccinator)とは?
頬筋は、頬の深い部分にある筋肉です。
食事をするときに、
- 食べ物を歯の上へ集める
- 頬を内側へ押して食べ物を逃がさない
- 咀嚼を助ける
といった重要な役割があります。
「頬が歯を押している」という考えは本当?
昔から、
頬の筋肉が強いと
「歯列が狭くなるのでは?」
という考えがありました。
そのため、
バッカルシールドなどの装置を使って頬の圧力を弱める治療も行われてきました。
しかし、
本当に頬筋が歯へ力を加えているのかは長い間はっきりしていませんでした。
この研究では何を調べたの?
研究ではミニブタを用い、
- 頬筋の筋電図(EMG)
- 頬筋の長さ
- 頬筋の厚み
- 歯槽骨に加わる圧力
を同時に測定しました。
ここまで詳しく調べた研究は当時ほとんどありませんでした。

結果① 頬筋は噛む直前に活動する
頬筋は、
咬筋が強く収縮する直前から活動を開始していました。
つまり、
食べ物が歯から外へ逃げないように、
頬が先に準備をしていることが分かります。
結果② 頬筋は縮むと厚くなる
研究では、
頬筋は収縮すると
- 前後方向に短くなり
- 横方向に厚くなる
ことが確認されました。
この変化によって、
頬が内側へ押し出され、
食べ物を歯列の上へ誘導していると考えられています。
結果③ 歯槽骨へ圧力が加わる
さらに、
頬筋の付着部へ圧力センサーを設置すると、
筋肉が収縮したときには
実際に歯槽骨へ圧力(pressure)が加わる
ことが確認されました。
つまり、
頬筋は単に頬を動かすだけではなく、
歯列の周囲にも力を伝えていることが分かったのです。
バクシメーターや筋機能矯正との関係
筋機能矯正では、
- 舌を正しい位置へ誘導する
- 唇・頬・舌の筋肉のバランスを整える
ことを目的に治療を行います。
歯並びは、
舌だけでも、頬だけでも決まりません。
外側からの力(唇・頬)
と
内側からの力(舌)
がつり合う
ニュートラルゾーン
に歯列は安定すると考えられています。

今回の論文は、
「頬筋が歯列へ圧力を加える」
という生理学的な仕組みを裏付ける重要な研究といえます。
この論文だけで「歯並びが治る」とは言えません
一方で、
今回の研究はミニブタを用いた動物実験です。
そのため、
この論文だけで
「筋機能矯正装置を使えば歯並びが治る」
とは言えません。
しかし、
筋肉が歯列へ力を加えていることを直接測定した貴重な研究であり、
筋機能療法や筋機能矯正の考え方を理解するうえで非常に重要な基礎研究です。

当院の考え
当院では、
歯並びだけを見るのではなく、
- 舌の位置
- 口呼吸
- 飲み込み方
- 唇や頬の筋肉の使い方
まで含めて診査・診断を行っています。
お子さまの成長期は、
筋肉のバランスを整えることで、顎や歯列の健全な発育をサポートできる可能性があります。
歯並びやお口の癖が気になる方は、お気軽にご相談ください。
参考文献


