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歯肉退縮に対する術式選択の新しい考え方― Multiple Gingival Recessionに対するMCAFとMCATのDecision Tree(2025)―

こんにちは。

福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
『西長住まつなが歯科』院長の松永紘明です。

今回は2025年にInternational Journal of Periodontics & Restorative Dentistryに掲載された、

「Decision Tree for the Treatment of Multiple Gingival Recession Defects When Utilizing MCAT or MCAF Based on Evidence and Clinical Experience」

について紹介します。

本論文は、複数歯に及ぶ歯肉退縮(Multiple Gingival Recession)に対して、MCAF(Multiple Coronally Advanced Flap)とMCAT(Modified Coronally Advanced Tunnel)のどちらを選択するかを、現在のエビデンスと臨床経験をもとに整理したレビューです。

これまで「どちらの術式が優れているか」という比較研究は多くありましたが、「どのような症例で使い分けるべきか」を体系的に示した報告はほとんどなく、本論文は非常に実践的な内容となっています。


根面被覆術のゴールドスタンダード

現在、単独歯の歯肉退縮では

CAF+CTG(歯冠側移動術+結合組織移植)

がゴールドスタンダードとされています。

一方で、複数歯に及ぶ歯肉退縮では

  • MCAF
  • MCAT

が最も広く用いられている術式ですが、

どちらを選択するかについて明確な基準はありませんでした。


この論文で提案されたDecision Tree

著者らは術式選択を以下の順序で行うことを提案しています。

① RT分類

② LKT(Lateral Keratinized Tissue)

③ 歯間乳頭の形態

④ 歯肉の厚み(Gingival Thickness)

⑤ CTGの必要性

術式決定(MCAFまたはMCAT)


① RT分類が最初の分岐

まず重要なのは、

2017 World Workshopの

RT分類

です。

RT1

歯間付着の喪失なし

予後良好


RT2

歯間付着は失われているが

頬側より少ない


RT3

歯間付着喪失が大きい

完全被覆は難しい

著者らは

まずRT分類を行うこと

を第一段階としています。


② LKT(Lateral Keratinized Tissue)

次に評価するのが

LKT

です。

LKTとは

歯肉退縮部の隣接部に存在する角化歯肉量です。

論文では

2mm

を重要な基準としています。

LKTが十分に存在すれ

MCAFが選択しやすくなります。

逆にLKTが少ない場合は

トンネル形成が有利となるため

MCATが推奨されています。


③ 歯間乳頭の大きさ

LKTが十分ある症例では

さらに

乳頭基底部

を評価します。

論文では

3mm以上

あれば

MCAFが適応となりやすいとしています。

逆に乳頭が細い場合は

MCATが有利です。

これは

トンネル法では乳頭を切開しないため

血流を温存しやすいからです。


④ 歯肉の厚み(Phenotype)

本論文では

厚い歯肉か

薄い歯肉か

も非常に重要視されています。

薄い歯肉では

CTGを追加した方が

長期安定性が高いことが

これまでのRCTでも示されています。

一方、

厚い歯肉では

CTGを省略できるケースもあります。

さらに近年は

Selective CTG

という考え方が提唱されています。

つまり

必要な部位だけCTGを追加する方法です。

これにより

口蓋採取部を最小限にしながら

良好な結果が得られると報告されています。


RT別の推奨術式

著者らのDecision Treeをまとめると

RT1

・LKTが十分

MCAF

または

MCAF+Selective CTG


LKTが少ない

MCAT


RT2

基本的に

CTGを併用

LKTや乳頭形態で

MCAFかMCATを選択


RT3

通常の根面被覆だけでは難しく

CTGに加え

再生療法も考慮

という流れになります。


著者らの考察

本論文で印象的だった点は

「MCAFが優れている」

あるいは

「MCATが優れている」

という結論ではなく、

症例に応じて術式を選択することが重要

と繰り返し述べられていることです。

また、

CTGも

「全例に入れる」のではなく、

歯肉の厚みを評価し、必要な部位だけ追加する

という考え方は、患者さんの負担軽減という点でも非常に合理的だと感じました。


まとめ

この論文では、

複数歯の歯肉退縮に対する術式選択を

  • RT分類
  • LKT
  • 乳頭形態
  • 歯肉の厚み

という順序で評価するDecision Treeとして整理しています。

単に「どちらの術式が優れているか」を議論するのではなく、「どの症例にどの術式を選ぶか」を明確に示した点が、本論文の最大の特徴と言えるでしょう。

今後も最新のエビデンスを学びながら、一人ひとりの歯ぐきの状態に合わせた治療を選択し、より良い医療を提供できるよう努めてまいります。


参考文献

Aroca S, Zucchelli G, Di Domenico GL, de Sanctis M. Decision Tree for the Treatment of Multiple Gingival Recession Defects When Utilizing MCAT or MCAF Based on Evidence and Clinical Experience. Int J Periodontics Restorative Dent. 2025;45:601–615.

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