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最後方の大臼歯でもCAD/CAM冠は大丈夫?362歯・4年間の後ろ向きコホート研究を解説

こんにちは。

福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
「西長住まつなが歯科」院長の松永紘明です。

近年、保険適用の拡大により、大臼歯にもCAD/CAM冠を装着する機会が増えてきました。

しかし、

  • 「最後方の大臼歯にも使って大丈夫?」
  • 「第二大臼歯は壊れやすいのでは?」
  • 「保険適用が制限されている理由は?」

と疑問に思われる先生も多いのではないでしょうか。

今回は、東北大学から報告された大臼歯CAD/CAM冠362歯を約4年間追跡した後ろ向きコホート研究を紹介します。


論文情報

猪股 実祐

大臼歯CAD/CAM冠の装着部位におけるリスクの検討
~装着4年後までの後ろ向きコホート研究~

東北大学博士論文(2021)


研究の背景

現在の保険診療では、大臼歯CAD/CAM冠の適応には一定の制限があります。

特に

  • 第二大臼歯
  • 最後方歯

では慎重な適応が求められてきました。

しかし、その根拠となる臨床データは十分ではありませんでした。

そこで本研究では、

「装着部位の違いはトラブル発生のリスクになるのか?」

を検討しています。


研究デザイン

後ろ向きコホート研究

対象

  • 362装置
  • 2016〜2021年
  • 東北大学病院・関連施設
  • 最大約4年間追跡

評価項目は

  • クラウン脱離
  • 破折
  • 根尖性歯周炎
  • 支台歯破折
  • チッピング

などの臨床的トラブルです。


結果① 装着部位による差は認められなかった

最も重要な結果です。

Cox比例ハザード解析では

  • 上顎・下顎
  • 第一大臼歯・第二/第三大臼歯
  • 最後方歯かどうか

いずれも有意なリスク因子にはなりませんでした。

Kaplan-Meier解析でも同様に有意差は認められていません。


結果② 約3割にトラブルが発生

362装置中

106装置(29.3%)

で何らかのトラブルが発生しました。

一見多く感じますが、その内容を見ると印象が変わります。


結果③ 最も多かったのは「脱離」

トラブルの内訳は

  • クラウン脱離:74.5%
  • 根尖性歯周炎:6.6%
  • 歯髄炎:4.7%
  • クラウン破折:4.7%
  • コア脱離:3.8%
  • 支台歯破折:3.8%
  • チッピング:1.9%

でした。

つまり、

CAD/CAM冠は「壊れる」よりも「外れる」ことが圧倒的に多い

という結果でした。


結果④ 生存率は高かった

興味深いのは、

何らかのトラブルは約3割で発生したものの、

除去や抜歯に至った失敗症例は6.9%

にとどまっていた点です。

また、

累積生存率は

  • 1年:93.7%
  • 2年:88.3%
  • 3年:86.5%

でした。

つまり、

脱離しても再装着などの処置で継続使用できる症例が多かったことが分かります。


結果⑤ 生活歯はリスクが高い可能性

Model1では、

生活歯は失活歯と比較して

HR 1.55

と有意に高いリスクを示しました。

著者らは、

CAD/CAM冠では削除量が比較的大きくなるため、

生活歯では歯髄への影響が関係している可能性を考察しています。


著者らの考察

本研究では、

装着部位そのものはリスクではありませんでした。

一方で、

  • 接着操作
  • 使用セメント
  • 支台歯形成
  • 歯髄の状態

などがトラブル発生に関与する可能性が示唆されています。

特に脱離は装着後早期に多く認められ、接着操作の重要性が改めて示されています。


私が感じたこと

現在でも、

「最後方だからCAD/CAM冠は避けるべき」

という印象を持つ先生も少なくありません。

しかし、本研究では、

最後方歯だからトラブルが増えるという結果は得られませんでした。

もちろん、

後ろ向き研究であり、

  • ブラキシズム
  • 咬合力
  • 支台歯形態
  • 咬合調整
  • クラウン厚み

などは十分に評価できていないため、この結果だけで適応を判断することはできません。

一方で、現行の保険適応について再考する材料となる興味深いデータであり、今後の前向き研究にも期待したいところです。

また、本研究ではトラブルの約75%が脱離であり、破折は比較的少数でした。これは、CAD/CAM冠の長期予後を考えるうえで、材料の強度だけでなく接着操作やセメント選択、適切な支台歯形成が重要であることを改めて示しているように感じました。


まとめ

本研究では、

  • 装着部位によるトラブル発生率に有意差は認められなかった
  • 約3割にトラブルを認めた
  • トラブルの約75%はクラウン脱離だった
  • 生存率は高く、多くは再装着などで継続使用できた
  • 生活歯ではリスクが高い可能性が示唆された

という結果でした。

CAD/CAM冠は今後さらに適応が広がる可能性のある治療法です。

エビデンスを理解しながら、それぞれの症例に適した材料選択と接着操作を行うことが、長期的な予後につながると改めて感じました。


参考文献

猪股 実祐.大臼歯CAD/CAM冠の装着部位におけるリスクの検討 ~装着4年後までの後ろ向きコホート研究~.東北大学博士論文,2021.

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