こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
『西長住まつなが歯科』院長の松永紘明です。
インプラント治療を希望される患者さんの中には、
「骨が足りないため、インプラントができません。」
「骨が足りないため、サイナスリフトが必要です。」
と説明を受けたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
サイナスリフトは、上顎の奥歯にインプラントを埋入するために骨を増やす治療法ですが、通常のインプラント治療よりも手術範囲が大きくなることがあります。

では、抜歯した時点で骨をできるだけ保存することで、将来的にサイナスリフトが必要になる可能性を減らせるのでしょうか?
今回は、その疑問について調べた2024年のランダム化比較試験をご紹介します。
なぜサイナスリフトが必要になるの?
上顎の奥歯を抜歯すると、
- 抜歯した部分の骨が吸収する
- 上顎洞(サイナス)が下方へ広がる(含気化)
という変化が起こります。
その結果、インプラントを支える骨の高さが不足し、サイナスリフトが必要になることがあります。

骨保存(ARP)とは?
ARP(Alveolar Ridge Preservation)は、抜歯した直後に骨補填材を入れ、抜歯後の骨吸収をできるだけ抑えることを目的とした処置です。
今回の研究では、
- 抜歯のみ
- 抜歯+DBBM
- 抜歯+コラーゲン含有DBBM
の3群を比較しています。

この研究では何を調べたの?
対象は、
- 上顎第二小臼歯~第二大臼歯
- 抜歯前の骨の高さが6~8mm
の患者さんです。
4か月後のCTで、
- 骨の高さ
- サイナスの大きさ
- サイナスリフトが必要になる可能性
を評価しました。
骨の高さはどう変わった?
何もしなかったグループでは、
中央部の骨の高さが平均2.7mm減少しました。
一方、ARPを行った2群では、
有意な骨高の減少は認められませんでした。
サイナスリフトが必要になる割合は?
研究では、
残存骨高が5mm未満の場合を、
ラテラルサイナスリフトが必要
と判定しています。
その結果、
- 抜歯のみ:89%
- ARP(DBBM):42.8%
- ARP(DBBM-C):40%
でした。
つまり、この研究ではARPを行ったグループの方が、ラテラルサイナスリフトが必要と判断される患者さんが少ないという結果でした。
ただし、ARPだけで十分とは限りません
今回の研究では、
ARPによって中央部の骨高は維持されましたが、
頬側や口蓋側の骨は吸収していました。
そのため著者らは、
ARPだけで骨を完全に保存できるわけではなく、症例によっては追加の骨造成が必要になる場合もある
と述べています。
当院の考え方
抜歯は、単に悪くなった歯を抜く処置ではありません。
将来インプラント治療を行う可能性がある場合には、抜歯後の骨をどのように残すかも、その後の治療に影響することがあります。
もちろん、すべての患者さんにARPが必要というわけではありません。
当院ではCTなどによる精密な診査を行い、骨の状態や将来の治療計画を踏まえながら、ARPや骨造成の必要性を含めてご提案しています。
まとめ
今回のランダム化比較試験では、
- ARPは中央部の骨高を維持する効果が認められたこと
- サイナスの拡大を抑える可能性が示されたこと
- ラテラルサイナスリフトが必要になる患者さんが少なかったこと
が報告されました。
一方で、ARPだけで骨を完全に保存できるわけではなく、症例によっては追加の骨造成が必要になる場合もあります。
抜歯後の処置は、将来のインプラント治療の選択肢にも関わる可能性があります。
当院では今後も最新の論文を学びながら、患者さん一人ひとりに適した、エビデンスに基づく治療を提供できるよう努めてまいります。
参考文献
Lam L, Ivanovski S, Lee RSB. Alveolar ridge preservation in posterior maxillary teeth for reduction in the potential need for sinus floor elevation procedures: A pilot study. Clinical Oral Implants Research. 2024.


