こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
『西長住まつなが歯科』院長の松永紘明です。
「歯を抜いた後はしっかり縫った方が治りが良いのですか?」
患者さんからこのような質問をいただくことがあります。
特に将来的にインプラント治療を予定している場合は、抜歯した部分の骨をできるだけ残す 抜歯窩保存術(Alveolar Ridge Preservation:ARP)が行われることがあります。
今回は、2025年にClinical Oral Implants Researchに掲載された研究をもとに、
「歯ぐきを完全に閉じる方法」と「あえて閉じない方法」ではどちらが良いのか?
についてご紹介します。
抜歯後はなぜ骨が減るの?
歯を抜くと、その部分の骨は自然に吸収してしまいます。
特に歯の外側(頬側)の骨は吸収しやすく、
- インプラントが入れにくくなる
- 見た目が悪くなる
- 将来的に追加の骨造成が必要になる
ことがあります。
そのため抜歯と同時に
- 骨補填材
- コラーゲンメンブレン
を使用して骨を保存する処置(ARP)が広く行われています。
今回の研究
今回の研究は、
頬側の骨が欠損した難しい抜歯窩
を想定した犬を用いた研究です。
Open Healing(開放治癒)
歯ぐきを無理に引っ張らず、そのまま自然治癒させる方法
と
Closed Healing(一次閉鎖)
歯ぐきを寄せて完全に縫い合わせる方法
を比較しました。
どちらも
- 骨補填材(Bio-Oss Collagen)
- 吸収性コラーゲンメンブレン(Bio-Gide)
を使用しています。

結果① 骨の出来方はほとんど同じ
8週間後にCTや組織学的に評価した結果、
- 骨の幅
- 新しくできた骨の量
- 骨造成された体積
には有意な差は認められませんでした。
つまり、
歯ぐきを完全に閉じなくても、骨は十分再生していました。
結果② 開放治癒でも4週間ほどで歯ぐきが治る
開放治癒では傷口が開いた状態から治ります。
「感染しないの?」
と心配になりますが、
今回の研究では
- 炎症は認められず
- 約4週間でほぼ上皮化
- 8週間では全ての症例で完全治癒
という結果でした。
結果③ 角化歯肉は開放治癒の方が残りやすかった
今回もっとも興味深かった結果がこちらです。
歯の周囲には
角化歯肉(しっかりした歯ぐき)
があります。
この角化歯肉は
- ブラッシングしやすい
- 炎症が起こりにくい
- インプラント周囲を健康に保ちやすい
という重要な役割があります。
今回の研究では、
歯ぐきを無理に引っ張って閉じた群よりも、
開放治癒の方が角化歯肉をより多く維持できました。
なぜ完全に閉じなくても治るの?
以前は
「骨を作るなら完全に閉じることが重要」
と考えられていました。
しかし近年では、
吸収性コラーゲンメンブレンを適切に使用することで、
歯ぐきを完全に閉じなくても良好な骨再生が得られることが報告されるようになっています。
もちろん、
すべての症例で開放治癒が適しているわけではありません。
骨の欠損が大きい場合や感染の状態、軟組織の量などを総合的に判断することが重要です。
この研究からわかること
今回の研究から、
- 骨造成量は両者でほぼ同じ
- 開放治癒でも良好に治癒する
- 約4週間で歯ぐきは閉鎖する
- 角化歯肉は開放治癒の方が維持されやすい
ことが示されました。
「必ず歯ぐきを完全に閉じなければならない」という従来の考え方だけではなく、症例に応じて治療法を選択することが大切だと考えられます。
まとめ
抜歯後の治療方法は、患者さんのお口の状態や骨の残り方によって最適な方法が異なります。
当院では、最新のエビデンスも参考にしながら、一人ひとりのお口の状態に合わせた治療をご提案しています。
「抜歯後にできるだけ骨を残したい」
「将来インプラントを考えている」
という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
Choi JW, Park JY, Cha JK, et al. Alveolar Ridge Regeneration With Open Versus Closed Healing in Damaged Extraction Sockets: A Preclinical In Vivo Study. Clinical Oral Implants Research. 2025;36:220-227.


