こんにちは。
福岡市南区西長住、
マルキョウ桧原店前にある
『西長住まつなが歯科』院長の松永紘明です。
インプラント治療を予定している方から、
「抜歯した後は骨補填材を入れた方がいいですか?」
という質問をいただくことがあります。
「骨補填材を入れれば、新しい骨がたくさんできる」
と思われる方も多いかもしれません。
しかし、実際には少し違います。
今回は2024年にClinical Oral Implants Researchに掲載された研究をもとに、抜歯後の骨の治り方についてご紹介します。
抜歯すると骨は自然に治ります
歯を抜いた後は、
血液が固まり、
その後少しずつ新しい骨へと置き換わっていきます。
ただし、その過程で骨の幅や高さは自然に減少してしまいます。
そのため、将来的にインプラント治療を予定している場合には、
抜歯と同時に骨補填材を入れて骨の形を保つ治療(歯槽堤保存術:Alveolar Ridge Preservation:ARP)
が行われることがあります。

この研究では何を調べたの?
この研究では、
抜歯が必要となった42名を3つのグループに分けました。
- GBR(骨補填材+コラーゲンメンブレン)
- Socket Seal(骨補填材+コラーゲンマトリックス)
- 自然治癒(骨補填材を使用しない)
4か月後に骨の一部を採取し、
顕微鏡(BSE-SEM)やマイクロCT(XMT)を用いて、
実際にどのような骨ができているかを詳しく調べました。
新しい骨が最も多かったのは自然治癒でした
顕微鏡で調べた結果、
新しくできた骨の割合は
- 自然治癒:約46%
- Socket Seal:約28%
- GBR:約22%
でした。
つまり、
新しい骨だけを見ると、自然治癒の方が多い
という結果でした。

骨補填材は失敗だったのでしょうか?
もちろん、そうではありません。
今回使用された骨補填材(DBBM)は、
4か月後にも一部が残っていました。
つまり、
骨補填材が存在する分だけ、
新しく骨へ置き換わるスペースが少なくなるため、
新生骨の割合が低くなったと考えられます。

骨の「量」と「質」は別のお話です
ここが今回の研究で最も重要なポイントです。
以前に同じ研究グループが報告した臨床研究では、
GBRやSocket Sealを行った方が、抜歯後の骨の高さや幅を維持しやすい
ことが示されています。
一方で、
今回の研究では
新しい骨の割合だけを見ると自然治癒の方が多い
という結果でした。
つまり、
「骨の形を保つこと」と「新しい骨が多くできること」は同じではない
ということです。
骨補填材には、
骨が減るのを抑え、
インプラント治療に適した骨の形を維持する役割があります。

メンブレンやコラーゲンマトリックスも大切
研究では、
GBRのメンブレンやSocket Sealのコラーゲンマトリックスが早期に露出・脱落した症例では、
新しい骨の形成が少なく、
骨補填材の周囲に線維性組織が多くみられる傾向がありました。
そのため、
骨補填材だけではなく、
創部を安定して保護することも、良好な治癒には重要であることが示されています。

まとめ
今回の研究では、
骨補填材を使用した方が、新しい骨の割合は少ない
という結果でした。
しかし、これは骨補填材が無意味ということではありません。
骨補填材の目的は、
抜歯後に失われやすい骨の形をできるだけ維持し、将来のインプラント治療を行いやすくすることです。
そのため、どの方法が適しているかは、
骨の状態や治療計画によって異なります。
当院では、CTによる診査を行い、それぞれの患者さんに適した治療方法をご提案しています。
抜歯後の治療について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
MacBeth N, Mardas N, Davis G, Donos N. Healing patterns of alveolar bone following ridge preservation procedures. Clinical Oral Implants Research. 2024;35:1452-1466.


